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 「Change is beautiful 変化することは美しい」 
 
「Change is beautiful 変化することは美しい」

 今日は雨。二十四節季では雨水を迎え、まさに暦そのものといった所、降る雪が雨に変わり、雪解けが始まる時期です。 チェンジ イズ ビューティフル。
  変化することは美しい。変化は美しい。

 普段の私は文章を書いた後にタイトルを取って付けるなんてことが多いのですが、今日は逆の様式で書き進めています。この言葉を紹介するのは、イサム・ノグチという人物の話をしていた時のことでした。

 彼の性分は真実を追求する人、アメリカ人との間に生まれた日系アメリカ人の立場で戦争の時代を生き、現地では在米日系人の強制収容所で拘留を経験、戦後10年を過ぎた頃、芸術家であった彼は広島平和記念公園の慰霊碑のデザインにも選ばれた、がしかし原爆を投下したアメリカの人間であることから作成は実現しなかった…。 
最近、自然環境と人間と都市と平和についての話題になることも多く、平和を創造できるモノって何なのだろう、彼の平和を願う、その気持ちを体現する形をもし作るならばという議論でしたが…、いや仏教しかり、真理・真実を心に置いて考えると、実は「変化」だな。変化は良いが悪いになることもあるが、悪いが良いにも変わる。

 2月のやわらかに香る梅も雨水に散り、薄紅の白化粧も瞼の裏に残るのみ。日本人の感性というのは夏新緑の紅葉を観て、赤い景色を想像し楽しむことができるというものだと言われるように、私たちは四季の変化の中に身を置きながら、しばしば自分の気に入った景色を欲してはそれを心の中で眺めているのではないでしょうか。 
現実に広がる目の前の状況や景色を観ること。心の欲する景色を見ること。この二つの見は同じ行為なのですが、表が白、裏が黒の一枚紙の表裏のようにまったく違う様相をしています。紙はさながらあなた。ただ紙は表と裏がなければ自分が存在できないことを知っていますが、私たちはしばしばどちらかで有りたいと願ってはいないか。真理とはしばしば自分都合からの脱却。だからまず手放すことの大切さを仏教は何度も説くのです。自分でありたいこと。個性を磨くことも大事です。しかし表か裏のどちらかだけしか自分のいのちを使えていない。そんな状態に陥らないことです。

 安定や強さを求めていたはずが、一方だけの不安定な状態になってはいないか。お寺に来て、お大師さま佛さまに手を合わせている時はすべてをありのままに見つめましょう。右と左の両の手をピタッと丁寧に合わせる。ただやるのではなく、意識して行うことが何事も大切です。右が佛、左が自分。仏さまの前では何も隠せません。そしてどのような事も、本来の自分自身は見ているし、聞いています。

 私たちは常に眼・耳・鼻・舌・身・意の六根から世界を認識しています。視覚、脳の性格(働き)と、心の揺れ動き、魂の記憶のなかで、時に自分にとっての心地よさを求め、時に弱さを隠すため、時に自分の正義(裁き)を守るためなど。よく考えると如何に自分が毎日を都合よく生きているのか、何とも言葉にならず絶句します。 
考えましょう。私の人生は、そういった自分の都合に近づけよう、近づけよう、と日々を生きているものなのか。一旦、それをやめて、真理の眼で生きようとしているのかを。前者を凡夫。後者を佛さまの心、菩薩さまの生き方と言うのです。

 お大師さまの教えは、心だけでなく、此の身も佛と成る教えです。「成佛する」とはただ佛の世界に往くことを言うのではありません。まさしく目覚められた如来さまのようになろうと先ず修行する菩薩さまのようになることです。 修行というと「山に登る=しんどい」というように、すぐ=厳しい、と考えがちですが、まず地図を準備したり、途中で食べる食料、登る靴、暑いか寒いかの環境をみたり、やることは沢山です。 
何よりも山の頂上や美しい景色や感動を心に抱いて、あなたは山に登ろうと決心するはずです。菩薩さまの修行も同じで、まずは心を起こすところから。菩薩さまはすべての命、存在と楽を一緒に得たい。存在(肉体)のある世界と存在を越えた世界も越えた真理を得たい。そうやって心がまず動くのです。諸行無常は真理です。山も頂上も自分も常に変化の中にある。私たちはモノを残そうとするが、まず空間・時間と変化の中にある自己と存在の本質を得て、内外の平和を求めなければなりません。

 自分のご都合主義は卒業していきましょう。


令和六年二月二十一日
25日(日)「柴燈護摩」府中市 十輪院 13時~
3月1日 「大黒天」23時~ ※日時注意
3日(日)「毘沙門天」6時~
「水子供養」10時~
20日(水/春分)「合同供養祭」10時~
21日(木)「大師御縁日 護摩」10時、20時

   
   令和6年2月21日 南無大師遍照金剛ありがとうございます。     


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