過去の法話へ
 人道を生きていますか?
 
 前生に善を修して      前世で己を律し、善を行い、
 今生に人を得         今の世に人として生まれた。
 この生に修せずんば     善い行いをしないならば、
 還って三途に落ちなん    死後はまた恐ろしい道へと落ちる

    弘法大師『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』   


 クマは可愛いとずっと思ってきた私。先日、信州は善光寺において晋山式(しんざんしき/新しく寺の住職となる儀式)があり、その帰りにクマ牧場なる場所へ行きました。

 善光寺の新しい貫主さまは、私がいつも天台宗の教えを習う先生であり、とても徳の高い方でいらっしゃいます。「死ぬことを心配するくらいならば(僧侶として)初めから修行をしない方がよい」という言葉が耳に残る。私も、仏さまに帰依し、正しく修行し、諸天善神に守られている限り、修行中に死ぬことなど無く、善の道を歩み、世の中に必要とされている限り、健やかでいられると心底より思っています。

 人間の生きる道を思惟(しゆい)するに、知足(ちそく)感謝の心を持って、誰かに必要とされるよう自分を磨きたいもの。日々に他者・生きとし生けるものを大切にすること。分かりやすく言えば愛することですが、慈しみ深い考えを持つこと、良い習慣を身に付けることが第一です。心(感情)と理解(智慧)は右と左の羽のようなものです。

 天台宗・伝教大師最澄さまは、
  己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり。
  「忘己利他」
という言葉を残されました。

 何も気にせず生きていると人間はいつも自分のことばかりを口にしていると気付きませんか?多く悪い面においては普段口にしている事が自分の行動になっていて、また心に思っていることが現実になっていることでしょう。あなたの「今の言葉、心」が今日、明日の現実を作っている。

 ですから言葉と心の性根が悪ければ何時まで経っても幸せになれません。運が悪い、運が悪いと口にしなければならない生活になる。そして自分をいつ変えたらよいのか分からぬままに、己の命令と暗示に従って益々不運となっていく始末となる。身勝手に生きる人間の特徴であり恐ろしいものです。

 私は信仰とは美しいものと思っていますし、輝きになられる神仏に心から手を合わせること。それによって、どうしようもない自分を救っていただけるものと感じています。そのうちに自分の本性に気付きます。人間の本質です。「反省のできること・気付けること」は重要です。そして伝教大師の言われるように、身勝手さを忘れた時に、自分の利益をはかることのない無私の施し、慈しみの本性が現れることに気付くでしょう。あなたは今、何度目の人間界を経験しに来ているのでしょうか。

 ①地獄、②餓鬼、③畜生、④修羅、⑤人、⑥天と六つの世界を命は輪廻する。
クマは動物の畜生道にいます。家で飼っている犬や猫も当然、畜生道を生きています。あらゆる命の行く末というものは生きている間に積んだ行為(業)によって決まる。弘法大師も、
「殺生が地獄道へと、貪欲さが畜生道への道を作る」と言われますし、

冒頭の言葉からも善い行いが前世にあるからこそ、あなたはいまこの世で人間として生まれている。つまりどうしようもない人間など一人もいない。胸を張って生きて欲しい。だけれども何も大切にできない身勝手さに生きるのであれば、死後・来世においては地獄・餓鬼・畜生のいずれかの世界に生まれてしまうでしょう。

 犬や猫も可愛いしイイじゃんと思われる方もあるかもしれませんが、私にその考えは無くなりました。自分や他人のフンを食べ、目の前のリンゴが欲しくて欲しくて浅ましく吠え散らす子グマを見たからです。その様子は衝撃でした。いやしい行動、貪欲な行為が来世を畜生道に導くとはこの事かと思い知らされました。
六道の中にも、また六道があると言いますが、身近なペット達は畜生道にして人道に近いのでしょう。逆に人道にありながら他人を許せなかったり、怒りに満ちた修羅道に生きる人。貪欲と欲望に支配された畜生道に生きる人もいるでしょう。せっかく他人を大切にできる人間に生まれて来たのです。 

 他を利するは喜びの極みと皆でなりましょう。
  慈悲に生きる。 修行をいたしましょう。

    日切大師弘元寺 平成三十年十月廿一日



《 お祈り・行事案内》
24日「馬頭観音 護摩」 10時(満月)

10月27 ~2日「前修行、祈祷」 毎朝5時
 ☆どうぞ一緒に一週間の修行をしましょう

11月2 日「大祈祷会」19時
3日「入仏記念法要」
9時半 法話・お受戒・お福投げ  
   12時 柴燈護摩・湯加持・火渡り修行
※天候により時間の変更があります。
皆さまお誘い合わせの上、お越し下さい。

9日「弁才天護摩」  20時  富貴自在
10日「三宝荒神」 20時  障難退散
21日「大師縁日の護摩」20時 写経奉納

   平成30年10月21日 南無大師遍照金剛ありがとうございます。     


トップページへ

戻る