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 「布施について①」
 
ありのままに諸行を見解せよ(世界を空なりと観ぜよ)。
これは原始仏教の詩句『スッタニパータ』に語られる言葉であり、
「縁起をさとること」の出発点となります。

 私たちはありのままに、この世のあらゆる出来事を、すなわち原因と結果によって作られる万象を、そして自分の行いについて究明することを課題としています。

 一方、『アナと雪の女王』、略して「アナ雪」は、ありのままに自分らしく生きるお話。《 Let It Go~ありのまま~》の曲でも、
「ありのままの姿見せるのよ ありのままの自分になるの」と歌います。

仏教視点で大真面目に語れば、ありのままの自分には実体が無い。ありのままの自分、一見己だと思っている自己は、例えば大きな画用紙の、小さな滲み(にじみ)に過ぎない。それを個性だと信じ込み固執し、埋没してはいけない。あなたの生命はもっと広い。もっと大きい。あなたの可能性(個性)は無限大。捉われから脱して行くのです。

 仏教は崇高な悟りを目指し、如来を讃嘆し、供養します。仏という御方は未熟な途中経過の私たちの成長を慈悲の心で見守り、観音・菩薩方は我々の隣に立ち、一緒に学び、共に悲しみ、共に楽しんでくださいます。仏さまを信じる方々、仏さまに感涙する多くの方が実体験として、この感覚を持っているのではないでしょうか。

 二世紀頃には成立していた『アショカの物語』には、
「身体によって、財産によって、生命によって、(真理)法に奉仕する人は、死ぬ時に憂いが無く、好ましき神の住処に赴く」と教えます(詳しくは来月②へ)。
神とは六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)の天道、天界を指しています。ちなみに真言宗では天の世界は楽しいことしか存在せず、苦は寿命の尽きる寸前にしか現れない為、すなわち菩薩行が出来ないから、来世も菩薩として人間世界に生まれて、修行(上求菩提、下化衆生)することを勧めます。

さて、この奉仕が布施を意味します。
多くの方が布施は「何かのお返し」であると誤解しているようです。例えば、お経を読んでくれた、だからお布施をする、は残念ながら本当の布施の意味をなしていません。布施は対価を支払うものでは無いからです。

 他者に対して「施し恵む」行為となることが布施の大事な要素。何かを期待し、見返りを求めるもの、代金、御礼は、ちょっと布施とは違います。

 そもそも「施す」とは何かを考えてみると良いでしょう。布施をするとは、自分に出来ることで相手に何か施しをさせていただくこと。言われたから、提示されたから、何かしてもらったからやることは「施し恵む」行為では無いことは理解できるかと思います。仏教は生命を慈しみ、生かそうとする教えとして、徹底しています。だから、後手に回ってやる教えでは本来無い。積極的に生きる。内発的に、自分のできることを探し、行動する。それが自然と布施になります。では、布施の実践項目の一つである無財の七施を紹介しましょう。

「無財の七施」

①眼 施:やさしい眼差しで相手をみること。
②和顔施(和顔悦色施):笑顔を見せること
③言辞施:やさしい言葉。粗暴でない、柔らかい言葉遣いをすること。
④身 施:立って迎えて礼拝する 。自分にできる体を使った奉仕。
⑤心 施:和と善の心で、深い供養を行うこと。相手に心をくばり、共振できる柔らかな心をもつこと。
⑥床座施:座る場所を譲ること。場所を譲ること。
⑦房舍施:家、宿を提供すること。 家屋の中で自由に 行・来・座・臥を得させること。

 以上が古くから大事にされてきた七つの施しで、無財と冠されるように、お金を必要としません。どれから始めても良いものですから、どれか一つから毎日実践していきましょう。仏さまに救われている者であれば、その恩返しを他者に向けること。これも実践修行の一つになります。そして、これを一つでも実践されている方があれば、それは善行者ですから、讃嘆いたしましょう。

これを「随喜(ずいき)」と言いますが、「相手の善行を自分のことのように喜べる者は、その善行を行った者以上の功徳を得ることができる」と仏典にも説かれています。

 人間は妬み、憎みます。それは自分の持っていないものを相手が持っていると羨ましく思うからです。実際にはそんなことはどうだって良いのです。自分のものでは無いのだから。 常に他者の善を見つめ、己の悪を見る。 他者の悪を見つめ、小我の善を見る、ではなりません。

 ありのままとは何なのか、ここが深め所です。

 次回は「喜捨」「福田(ふくでん)」、布施の功徳について、もう少し詳しくお話いたします。


令和五年三月二十一日
《ご修行案内》
4月2日(日)「滝修行」朝6時お寺出発
「水子供養・護摩」10時~
3日(月)「毘沙門天」朝5時
21日(金)「大師御縁日 護摩」10時~、20時~
5月5日(金)「大黒天 一時千座法」23時
7日(日)「滝修行」朝6時お寺出発
「水子供養・護摩」10時~
11日(日)「弁財天 護摩」20時


   
   令和5年3月21日 南無大師遍照金剛ありがとうございます。     


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