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 「お大師さまを心に入れて」
 
 弘元寺のご本尊は「弘法大師さま」です。秘仏として、普段はお厨子を閉じています。ご開帳をしたのはお堂を建て替えました平成十五年の落慶法要が最後です。もう九年が経ちますが、お大師さまとのご縁に喜ばれて本当に多くの方々がお寺の坂道に溢れかえっていたのを思い出します。
それと同時になんだか心があたたかくもなります。

「あのお大師さまの目の美しさが今でも頭に残っています。」という言葉をときおり聞きます。
お大師さまの教え、真言宗の信仰の特徴は 《私自身が本より仏さまなのだ》 という事実に、
確かに、本当に、気付きましょうね、というものです。別に不思議なことではありません。
世の中は、目に見えるものと、目に見えないものでできています。
その目に見えないものの代表が 《心》 であり、偏見に充ちた《それ》を上手に解体していき、
観察し、行きつく所がさとりの世界。
「有る」「ある」と思っていたものを「ない」「無」と知り、
「ある」「ない」の比較できる世界から、「有無」を越えた「空」をおぼえます。
むずかしい話はこの辺で置いておきましょう。

 人はなかなか、自分の存在価値や使命、簡単に言えば「生きる意味」を見失いがちです。それは一つにはよきお手本となるものがない、というのもあると思います。人はこころがあるので、いい格好をして生きたいというようにできています。また、いただいたいのち、どうせならよく使わせていただきたいものだ、なんて思うものです。

 わたしは、仏さまというのは最高のお手本であると思っています。
仏さまの真似をして生きていたら間違いが無い。そう言い切れると思います。
またありがたいことに仏さまは、私がしんどいときには助けてくれます。

父親のようでもあり、 母親のようでもある存在、 それが仏さまです。

あなたのこんなところはお母さんに似ていますね。あなたのこんな仕草はお父さんに似ていますね。
そんなことを少なからず言われたことがあると思います。わたしはね、みなさんに、お友達や誰かからでもいいです、
「あなたのこんなところは仏さまみたいね」って言われてもらいたいなと思っています。
たとえば、
「あなたの笑顔はこちらも笑顔にさせるわね」とか、
「あなたに会うとなんだかほっとするわ」なんて言われて欲しいと思うわけです。

それが、ほとけさまがこころに宿るということです。

お大師さまを、仏さまをこころに入れましょう。あなたの呼吸がお大師さまの呼吸そのもの。
唱えるご真言もお経もあなたの内にあるお大師さまが、あたかも大事なものをあふれ出すかのように唱えて下さっています。
やさしい言葉も、あたたかい言葉も、あなたの内にある仏さまの言葉があふれいくものなのです。
 本堂の正面にいらっしゃるのは、太陽の光に包まれた「日輪大師」というお大師さまのお姿です。
そのお姿を心におさめるようにして下さい。
そしてまんまるの光に包まれたお姿を見ながら、私の呼吸がお大師さまと同じ呼吸になるように意識します。これがしっかりパワーをいただく方法です。今日から実践してみてくださいね!


                         

   平成24年12月21日 南無大師遍照金剛ありがとうございます。     

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